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 読みかけの本を膝の上に置いたまま、ソファにもたれて眠っている。気持ちのいい風が本のページをはらりとめくり、 眠るアリアの髪をついでに揺らして去っていった。手を伸ばして、乱れた髪を整えてやる。そのまま一度髪を撫で、そしてオルフは、 そっとアリアの頬に触れた。
 それでもアリアが起きる気配はない。それだけ、疲れているのだろう。無理もないとオルフは思った。
 青竜の巫子の役目は決して軽いものではない。様々な重責もあるだろう。なにより、高い適正があるといえ、 竜の力を扱うことはやはり人の体に少なからぬ負担をかける。
「アリア…ありがとう」
 ごめんとは言わない。
 アリアは自らの意思で巫子になってくれた。謝ってしまえば、そんなアリアの決意を踏みにじることになってしまう。
 柔らかく、暖かいアリアの頬。他の人たちにするように、オルフにも変わらない笑顔を向けてくれる。青竜ヴォルフハルトでなく オルフが好きだと笑う。そんなアリアの笑い顔を見るのがオルフは好きだった。
「好きだよ、アリア」
 たった四匹のみ生き残った竜。
 オルフにはこの大地と、そこに生きるすべての生命を守る役目がある。アリアか世界か、どちらか選べと言われたら 迷わず世界を選ぶだろう。
 けれど、きっとオルフは後悔する。自身の選択をではなく、その選択をしなければならない状況を作ってしまったことを。
 永遠にも近しい時の中、こんな風に誰かを思うことは随分と久しぶりだった。
「愛してる…」
 額に口付ける。閉じた瞼に、手で触れる逆の頬に、そして唇に。軽く、触れるように口付けを落とす。
「この世界の次に、あなたを愛してる」






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